公的保障・公的年金
70歳まで待つと42%増。繰下げ受給は全員に向いている?
「70歳まで待てば年金が42%増える。それなら、みんな待ったほうがよいのでは?」そう思っていませんか? 増えるのは「増額の対象になる年金」です。加給年金のように増額の対象外で、待っている間は受け取れない場合があるものもあります。この記事では、繰下げ受給を決める前に確かめたい制度上の条件を整理します。
2026年10月2日時点の制度にもとづく一般的な説明です。年齢・加入歴・所得・家族関係などの条件があり、支給の可否は各制度の窓口が個別に判断します。
全員に向いているとは限りません。繰下げ受給は、原則65歳から遅らせた月数ごとに対象の年金が0.7%増える制度で、70歳まで5年待つ例では42%増です。ただし、加給年金などは増額の対象外で、待機中に受け取れない場合があります。ほかの年金の受給権による制約もあり、基礎と厚生を別々に検討できる場合もあるため、決める前に年金事務所で確かめましょう。
この記事のポイント
- 繰下げは月0.7%の増額。42%は利回りではない
- 加給年金などは増額の対象外。ほかの年金にも注意
- 待つ間の生活費と、額面・手取りの差も確認
目次
繰下げ受給の増額率は、遅らせた月数×0.7%
老齢年金は、原則として65歳から受け取ります。繰下げ受給は、その受け取り始めを65歳より遅くする方法です。遅らせた月数ごとに、増額の対象になる年金が0.7%ずつ増えます。
70歳まで5年待つ例では、5年×12か月=60か月なので、0.7%×60か月=42%の増額です。この42%は、対象の年金額がどれだけ増えるかを示す増額率です。お金を運用して増やすときの利回りとは別のもので、1年あたりの率でもありません。
自分の数字で計算してみる
※繰り下げられる上限の年齢には、本人の生年月日による条件があります。計算の結果は増額率の目安です。自分の場合は年金事務所で確かめましょう。
加給年金などは増額の対象外。待つ間は受け取れない場合も
0.7%ずつ増えるのは、増額の対象になる年金です。繰り下げたからといって、受け取る年金のすべてが同じ割合で増えるわけではありません。対象にならないものの代表が、加給年金です。
加給年金は、生計を維持している配偶者や子がいるなど、条件を満たす場合に、老齢厚生年金に加算される年金です。加給年金などは、繰り下げても増額されません。さらに、繰り下げて待っている間は、加給年金なども受け取れない場合があります。
繰り下げた年金(増額の対象部分)
- 遅らせた月数ごとに0.7%増える
- 待っている間は受け取らない
加給年金など(増額の対象外)
- 繰り下げても増額されない
- 待機中は受け取れない場合がある

待てば全部まとめて42%増えると思っていました。増えないものや、待つ間はもらえない場合もあるんですね。
加給年金が付くかどうかは、配偶者や子の状況などで決まります。対象になりうる家族がいる方は、増える部分だけでなく、待つ間に受け取れなくなるかもしれない部分も並べて比べましょう。待機中の扱いは、年金事務所で個別に確かめることが欠かせません。
ほかの年金の受給権や、在職中の支給停止にも注意
老齢年金のほかに受け取る権利(受給権)がある年金によっては、繰下げに制約があります。繰り下げられるかどうかなど、扱いが変わることがあるため、「待てば必ず42%増える」と考えないことが大切です。
年金を受け取る年齢になっても会社などで働く予定の方は、在職老齢年金にも目を向けましょう。給与などと老齢厚生年金の合計に応じて、年金の支給が止まる部分が出ることがある仕組みです(在職老齢年金の計算のルール)。働きながら繰下げを考える場合は、支給停止になる部分の扱いも個別に確かめたい点です。
| 個別に確かめること | 確かめる理由 |
|---|---|
| 加給年金などの待機中の扱い | 増額の対象外で、待つ間に受け取れない場合がある |
| ほかの年金の受給権 | 繰下げに制約がある |
| 在職老齢年金で支給停止になる部分 | 働きながら待つ場合の扱いを確かめる |
| 本人の生年月日 | 繰り下げられる上限の年齢などの条件にかかわる |
老齢基礎年金と老齢厚生年金を別々に検討できる場合も
厚生年金に加入していた方の老齢年金は、国民年金から出る老齢基礎年金と、厚生年金から出る老齢厚生年金に分かれています。繰下げは、2つをまとめて決めるものとは限らず、別々に検討できる場合もあります。
両方を繰り下げる
- 待つ間は、どちらも受け取らない
- 増額の対象部分は、どちらも増える
片方だけ繰り下げる
- もう片方は65歳から受け取る
- 増額されるのは、繰り下げた方だけ
片方を65歳から受け取れば、待つ間の収入の一部に充てられます。ただし、加給年金などの扱いや、ほかの年金との関係によって、どの組み合わせが合うかは人それぞれです。組み合わせを考えるときも、増額の対象外になるものを先に確かめておきましょう。

繰り下げるか、繰り下げないかの2択とは限りません。基礎と厚生、それぞれの条件を確かめてから考えましょう。
繰下げが向いているか、決める前に家計と手取りも確認
繰下げ受給が向いているかどうかは、増額率だけでは決まりません。待っている間は、繰り下げた年金を受け取らないため、その間の生活費を別に準備する必要があります。また、税金や社会保険料が変わることもあり、手取りまで同じ割合で増えるとは限りません。待つ間の家計と手取りの考え方は、繰下げで待つ間の生活費と手取りの記事で解説しています。
繰下げ受給を決める前のチェック
- 増額の対象になる年金と、対象外のものを分けた
- 加給年金などの、待機中の扱いを確かめた
- ほかの年金の受給権がないか確かめた
- 働く予定があれば、支給停止になる部分の扱いを確かめた
- 本人の生年月日で、上限の年齢などの条件を確かめた
- 基礎と厚生を別々に検討できるか確かめた
- 待つ間の生活費と、増えた後の手取りを並べた
見込額は、ねんきんネットで確かめられます。条件が込み入った部分は、繰下げを決める前に年金事務所で相談しましょう。待つ間の家計の組み立ては、あいマネのFP相談で、公的保障を前提に、家計の不足と備え方として整理することもできます。
よくある質問
繰下げ受給をすると、加給年金も増えますか?
増えません。加給年金などは、繰下げによる増額の対象外です。また、繰り下げて待っている間は、加給年金などを受け取れない場合もあります。自分の場合の扱いは、年金事務所で確かめましょう。
ほかの年金を受け取る権利があっても、繰下げはできますか?
ほかの年金の受給権によっては、繰下げに制約があります。繰り下げられるかどうかなどは人によって違うため、決める前に年金事務所で確かめましょう。
老齢基礎年金だけを繰り下げることはできますか?
老齢基礎年金と老齢厚生年金は、別々に検討できる場合があります。片方だけ繰り下げ、もう片方は65歳から受け取る組み合わせが合うかどうかは、加給年金などの扱いも含めて、自分の条件で確かめましょう。
繰下げ受給は、全員に向いていますか?
全員に向いているとは限りません。42%は対象の年金額の増額率で、運用利回りではありません。加給年金などの扱い、ほかの年金の受給権、待つ間の生活費、増えた後の手取りなど、確かめることは人によって違います。
※繰下げ受給には、対象になる年金、繰り下げられる上限の年齢、ほかの年金との関係などに条件があります。
※42%は、65歳から60か月遅らせた場合の、対象の年金額の増額率(0.7%×60か月)です。運用利回りではありません。
※加給年金などの待機中の扱い、在職老齢年金で支給停止になる部分、本人の生年月日による条件は、年金事務所で個別に確かめてください。
※掲載している内容は、2026年10月2日時点の制度・公表資料にもとづく一般的な情報です。給付・免除には所定の条件があります。詳細は加入先・公的窓口でご確認ください。
※あいマネの相談(FP相談・保険相談)は、家計の整理をお手伝いする窓口です。公的給付の支給を決める窓口ではありません。
